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「自分の感受性くらい」

更新日:11月10日





自分の感受性くらい  茨木のり子




ぱさぱさに乾いてゆく心を


ひとのせいにはするな


みずから水やりを怠っておいて




気難しくなってきたのを


友人のせいにはするな


しなやかさを失ったのはどちらなのか




苛立つのを


近親のせいにはするな


なにもかも下手だったのはわたくし




初心消えかかるのを


暮しのせいにはするな


そもそもが、ひよわな志にすぎなかった




駄目なことの一切を


時代のせいにはするな


わずかに光る尊厳の放棄




自分の感受性くらい


自分で守れ


ばかものよ


                   

詩集「自分の感受性ぐらい」(1977刊)所収



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